日本臨床外科学会雑誌
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症例
嚢胞性病変との鑑別を要した縦隔原発炎症性筋線維芽細胞腫瘍の1例
代田 智樹江口 隆藏井 誠濱中 一敏吉田 和夫天野 純岩谷 舞佐野 健司
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2012 年 73 巻 4 号 p. 807-810

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抄録

炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor:IMT)は,かつて炎症性偽腫瘍と言われた稀な疾患で,肺や腹腔内に好発する.今回われわれは縦隔に発生し,嚢胞性病変との鑑別が困難であった炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor:IMT)の1例を経験したので報告する.症例は65歳,女性.検診の胸部CT検査で異常陰影を指摘され,当院を受診した.造影CTで,気管分岐下に食道に接する約5cm径の辺縁平滑な腫瘤を認め,腫瘤辺縁と隔壁様部分を除いて大部分は造影効果を認めず,嚢胞成分が疑われた.MRIでは,T1強調像で低信号にT2強調像で高信号に描出された.以上より気管支嚢胞や食道嚢胞あるいは嚢胞変成を生じた神経原生腫瘍などを疑い,胸腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.肉眼的に腫瘍内には液体成分の貯留を認めず,病理診断では,豊富な粘液を背景に,炎症性細胞浸潤を伴う紡錘形細胞の増生を認め,粘液増生を伴うIMTと診断された.縦隔腫瘤の鑑別として,稀ではあるがIMTも考慮すべきと考えられた.

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© 2012 日本臨床外科学会
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