抄録
症例は63歳,男性.肛門周囲から持続する排膿を12年にわたり放置していた.発熱と疼痛を主訴に当科を受診.著明な耐糖能異常,臀部蜂窩織炎に加え,排膿部に一致する2×3cm大の腫瘤を認めた.生検の結果は高分化の扁平上皮癌であった.病歴より痔瘻部に発生した痔瘻癌と診断し,直腸切断術を施行した.術後の病理組織学的検査では直腸粘膜面と連続する瘻孔は認められず,腫瘍は癌真珠の形成,メラニンの沈着を伴っており,皮膚由来の基底扁平上皮癌であった.リンパ節転移,遠隔転移を認めず,現在無再発生存中である.痔瘻癌は痔瘻の長期経過中にみられる稀な疾患であり,その診断には臨床経過を重視した診断基準が用いられている.自験例はこれに則って診断を下したにもかかわらず,実際には皮膚由来の癌であった.術前の画像で瘻孔の存在を証明できないものについては,皮膚癌である可能性も考慮し,術式について十分な検討を行うべきと考えられた.