認知症治療研究会会誌
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当院で経験したレビー小体型認知症(DLB)の8 例における 意識障害に対するタキシフォリンの有効性の検討
中坂 義邦
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 8 巻 1 号 p. 47-50

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抄録

DLB(Dementia with Lewy Bodies,レビー小体型認知症)は2007 年の東京都健康長寿医 療センター研究所による神経病理診断の報告によれば約20% と報告されており1),近年の高齢者にお いては急速に増加しているとみられる.2017 年になって診断基準が改訂されたものの2),診断基準の 感度の低さ,正診率の低さが以前から指摘されている.初期から記憶障害が目立たない事も一因と言 われ,早期診断のために,2020 年,McKeith らは「DLB への進展を示唆する様々な症候を伴う認知 症発症前段階(Prodromal DLB)」と定義し,軽度認知障害発症型(DLB-MCI),せん妄発症型(DLBdelirium), 精神症状発症型(DLB-psychiatric)の3 つに分類している3).実際に筆者のDLB 症例経 験でもせん妄~変容性の意識混濁に至る症例が20% 程度存在した.意識障害の治療については,リ バスチグミン(コリンエステラーゼ阻害薬),シチコリン(CDP コリン)などの有用性が報告されて いるが4),DLB 特有の薬剤過敏性という特徴により,薬剤性EPS(錐体外路症状),迷走神経反射に よる失神,心臓不整脈(QT 延長,高度徐脈など)という副作用の問題が数多く指摘され5),加齢と ともに副作用リスクが高まる高齢者が長期連用する事が困難であり,断念せざるをえない症例も少な くなかった.そこで筆者はグルタチオンを増やす可能性のあるタキシフォリンに着目し,上記の理由 で薬剤が使用困難な2~3 の症例に試用して,せん妄~変容性意識混濁に対して明確な覚醒効果を確 認した.その後も症例経験を重ね,8 例について効果を検討した.特にグルタチオン点滴治療で顕著 な反応を示す症例に対して個別差はあるもののタキシフォリンによる覚醒維持の可能性が期待でき る.

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