日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝原発が示唆されたガストリノーマの1例
大塚 将之中島 正之木村 文夫清水 宏明吉留 博之宮崎 勝
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2012 年 73 巻 5 号 p. 1205-1210

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抄録

肝原発ガストリノーマはまれだが,今回肝原発として矛盾しない1例を経験した.症例は35歳,女性.上腹部痛を主訴に近医受診.十二指腸潰瘍と肝後区域に腫瘤を認め紹介された.肝内胆管癌の診断で手術施行も,病理組織検査で神経内分泌腫瘍と診断された.術前術後全身検索では肝外病変は認めなかった.4年5カ月後,十二指腸潰瘍が再発,肝内側区域に腫瘍性病変を認めた.空腹時ガストリンが高値を示し,神経内分泌腫瘍の再発でガストリノーマと診断,外科切除を施行した.病理組織検査では神経内分泌腫瘍,免疫組織学的にガストリンが証明された.初回切除時の標本を再検討したところ同様にガストリンが陽性であった.術後ガストリン値は正常化,再切除後2年3カ月現在,無再発生存中で,肝外病変も明らかでない.肝原発ガストリノーマの診断は難しいが,本症例では臨床経過から肝原発と判断した.本腫瘍は低悪性度で,切除により長期予後が期待できる.

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© 2012 日本臨床外科学会
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