2012 年 73 巻 6 号 p. 1361-1366
症例は28歳,女性.主訴は右乳頭分泌.2005年3月より主訴出現し当科受診.右乳頭から多孔性に淡褐色の乳頭分泌を認めた.超音波検査では右乳頭から外側に乳管拡張像を認め,MRI検査では乳頭より外側へ乳管拡張に伴う造影所見を認めた.嚢胞性に乳管内分泌物が充満する非浸潤癌を考えた.細胞診,針生検では診断に至らず,外科生検でDCISの病理診断となり右単純乳房切除術とtissue expander挿入術を施行した.病理所見では大小多数の嚢胞性病変を認め,内部には好酸性の分泌液の充満を認めDCIS,cyctic hypersecretory carcinomaと診断した.免疫染色ではER:陽性,PgR:陽性,HER2:1+であった.妊娠,出産を希望しており術後補助療法は行わず,経過観察のみで術後24カ月に女児を出産した.現在術後76カ月で再発を認めていない.