日本臨床外科学会雑誌
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症例
回腸憩室穿孔の1例
榎田 泰明富澤 直樹安東 立正小川 哲史伊藤 秀明竹吉 泉
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2012 年 73 巻 6 号 p. 1411-1415

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抄録

症例は75歳,男性.来院2日前の昼食後より右下腹痛が出現し,症状が増悪したため当院外来を受診した.来院時下腹部全体に強い圧痛と筋性防御を認めた.腹部単純X線検査で遊離ガス像はなかった.腹部造影CT検査では回盲部から上行結腸にかけて浮腫性の変化を認めたが,遊離ガス像はなかった.腹部理学所見から汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.腹腔鏡下の観察でDouglas窩に多量の膿性腹水を認め,回腸末端の腸間膜対側に穿孔部を認めた.汚染が高度のため小開腹に移行し,回盲部切除と洗浄ドレナージ術を施行した.術後経過は良好で,第7病日退院した.病理診断では穿孔部に高度の炎症を伴う仮性憩室が存在し,回腸憩室穿孔と考えられた.小腸憩室穿孔はまれな疾患であり,術前診断は困難であるが,急性腹症の原因として鑑別すべき疾患である.その際,診断的腹腔鏡は病態や部位の診断,並びに開腹部位の決定や最小化に有用と思われた.

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© 2012 日本臨床外科学会
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