日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔内出血により緊急手術を要した進行胃癌に併存したGISTの1例
阿尾 理一村山 道典菅澤 英一宇都宮 勝之冨松 聡一井上 公俊佐藤 仁哉松熊 晋
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2013 年 74 巻 1 号 p. 81-86

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抄録

62歳,男性.胃体上部の進行胃癌に対して当院消化器内科で精査中,突然の心窩部痛を主訴に救急外来を受診した.胃癌からの腹腔内出血を疑い,緊急開腹術を施行したところ,腹腔内に350ccの血性腹水貯留,胃体下部前壁に付着した有茎性血腫様腫瘤を認めた.胃癌の膵尾部への直接浸潤が窺われたが,血腫様腫瘤への浸潤は見られず,胃全摘,膵尾脾合併切除術を施行した.病理組織学的に,胃癌は非充実型低分化腺癌の像を呈し,膵前面脂肪組織に浸潤していた.血腫様腫瘤は一部胃壁に連続し,また腫瘤内に紡錘形細胞増生巣を認め,免疫組織学的にCD34,KIT陽性であった.腫瘍細胞の虚血性壊死・変性,間質の浮腫が見られたことから,外向性発育を示した有茎性GISTが軸捻転を起こし,心窩部痛,腹腔内出血を起こしたものと考えられた.胃癌に合併し,緊急手術対象となる症状をきたした有茎性GISTの症例を経験したので考察を加え報告する.

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© 2013 日本臨床外科学会
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