日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
腹壁膿瘍を契機に発見された横行結腸癌の1例
田 鍾寛山岸 茂佐藤 渉石部 敦士仲野 明
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 74 巻 10 号 p. 2846-2851

詳細
抄録

症例は76歳,男性.10年前に胃癌に対し胃亜全摘術を施行された.2010年6月,腹痛を主訴に受診した.腹部正中手術痕に一致して圧痛を伴う発赤,腫脹を認めた.CT検査で腹壁膿瘍と診断し,切開排膿後ドレーンを留置した.ドレーンから便汁が流出し,造影で横行結腸が描出され,下部消化管内視鏡検査で横行結腸に全周性2型進行癌を認めたため横行結腸癌の穿通による腹壁膿瘍と診断し,開腹結腸部分切除術(横行結腸),腹壁合併切除を施行した.病理組織検査では皮膚から腫瘍に瘻孔を認め,腫瘍側に瘻孔に沿って腫瘍の浸潤を認めた.病理ではtub2,pSI(腹壁,小腸間膜),pN0,pPM(-),pDM(-),Stage IIであった.術後2年経過した現在,無再発生存中である.腹壁膿瘍を合併した大腸癌に対し,保存的治療を先行させ膿瘍を縮小させた後に手術を行うことで,より低侵襲で安全に治癒切除を期待できると考えられた.

著者関連情報
© 2013 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top