日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔内出血を伴った出血性胆嚢炎の1例
谷口 正展金井 俊平北村 美奈中村 一郎中村 誠昌下松谷 匠
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2013 年 74 巻 2 号 p. 503-507

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抄録

急性胆嚢炎は日常診療で比較的多く遭遇する疾患であるが,胆嚢出血を合併することはまれである.今回,急性胆嚢炎に胆嚢出血を合併し,さらに腹腔内出血を伴った症例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.症例は48歳男性で以前よりアルコール性肝硬変,慢性腎不全にて近医に通院され透析治療を受けていた.今回,右季肋部痛を認めたため近医受診した.急性胆嚢炎の診断にて保存的治療を行うも軽快せず当科紹介となった.腹水穿刺にて腹腔内出血を確認したため壊疽性胆嚢炎が疑われ緊急手術を施行した.腹腔内を観察したところ胆嚢は緊満しており穿刺にて鮮血の貯留を認めた.また胆嚢の漿膜が一部剥離し,同部位より出血を認めていた.このため胆嚢出血および胆嚢壁の損傷による腹腔内出血と診断し胆嚢摘出術を施行した.術後は良好に経過した.本症例のように基礎疾患をもつ胆嚢炎症例には胆嚢出血の発症も念頭に置く必要があると考えられた.

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