2013 年 74 巻 4 号 p. 1053-1059
退形成膵管癌は,膵癌の中でも比較的まれで,予後も非常に不良とされている.今回われわれは,主膵管内に進展を示した退形成性膵管癌の1例を経験したので報告する.症例は63歳,女性.心窩部痛,背部痛を主訴に,近医受診し,急性膵炎を疑われ,精査加療目的で紹介された.CT,MRIで膵体部を中心に,膵実質を置換するような形態の長径約8cm大の腫瘤を認めた.辺縁は比較的良く造影され,内部には広範に低吸収域を伴っていた.MRCP,ERCPともに,主膵管は,膵頭部で途絶しており,ERCP時の細胞診で,class Vと診断された.亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行った.病理検査で,退形成性膵管癌(多形細胞型)と診断された.膵頭部主膵管内に腫瘍細胞が充満するように進展を認めた.術後5週間目から,外来で,補助化学療法を開始したが,術後2カ月目のCTで,多発大動脈周囲リンパ節再発を認め,術後約4カ月で死亡した.