2013 年 74 巻 4 号 p. 921-924
症例は56歳,男性.自殺目的で強酸性洗剤を服用し,当院に救急搬送された.保存的治療中に胃穿孔を認めたが軽快し,経口摂取可能となり,酸性洗剤服用後第56病日に退院した.退院64日後,頻回の嘔吐で再入院した.胃体中部から幽門部にかけて腐食性瘢痕狭窄を認めた.内視鏡的バルーン拡張術を約半年間,合計13回施行したが,再狭窄を繰り返すため,初発から306日後に手術を施行した.膵臓,脾臓との癒着が高度で瘢痕狭窄部の切除は困難であったため,壁の伸展が良好であった胃体上部と空腸のバイパス手術を行った.術後経過は良好で常食摂取可能となり術後第14病日に退院した.酸性物質による腐食性瘢痕狭窄を認めた場合,内視鏡的拡張術では改善することが困難であることが多く,早期に外科的治療を選択すべきと考えられた.