日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
膵周囲に発生し診断に苦慮した後腹膜海綿状血管腫の1例
三宅 隆史鈴木 正彦浅羽 雄太郎鶴岡 琢也松山 温子水上 泰延
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 75 巻 11 号 p. 3169-3174

詳細
抄録

症例は72歳,男性.健診で異常を指摘されてCTを施行.膵体部を取り囲む嚢胞性病変を認めた.質的診断には至らず経過観察されたが,増大傾向を認めたため膵嚢胞性腫瘍を第一に疑い脾温存膵体尾部切除を施行した.腫瘍は多房性の嚢胞性病変で一部は被膜が肥厚して硬く,その近傍の膵実質には炎症を認めた.術後経過は良好で第16病日に退院となった.病理組織学的所見は後腹膜海綿状血管腫で,膵との連続性は認めなかった.後腹膜の海綿状血管腫は他の部位のものとは異なり乏血性であることが多く,稀な疾患のため診断に苦慮することが多い.さらに,本症例では膵近傍に発育したため膵嚢胞性腫瘍との鑑別が困難であった.これまでに報告された後腹膜海綿状血管腫もその多くは術前診断がつかないまま手術されているため,血流に乏しい嚢胞性病変の鑑別には後腹膜海綿状血管腫の存在も考慮すべきであると考える.

著者関連情報
© 2014 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top