2014 年 75 巻 11 号 p. 3175-3179
症例は65歳,男性.臀部腫瘤と疼痛を主訴に受診した.骨盤部造影CT検査で,前仙骨部に長径13cmの嚢胞性腫瘤を認め,腫瘤内部に早期から濃染する2cm大の結節を認めた.PET/CT検査では同部位にSUVmax:1.5の集積を認めた.必ずしも悪性を否定できない所見であったが,前仙骨部嚢胞性腫瘍の診断で経仙骨的に腫瘤摘出術を施行した.摘出標本は13×10cmの嚢胞で白色粥状の内容で満たされ,壁の一部に2.0×1.0cmの壁在結節を伴っていた.病理組織学的所見では,嚢胞壁は異型のない重層扁平上皮であり,壁在結節からは高分化扁平上皮癌を認め,扁平上皮癌を合併したepidermoid cystと診断した.成人の前仙骨部epidermoid cystの悪性化は極めて稀であるが,前仙骨部腫瘍性病変に対しては,その可能性を念頭に,診断後は速やかな完全摘出を行うべきと考えた.