日本臨床外科学会雑誌
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症例
乳房温存療法後に発生した放射線誘発血管肉腫の1例
尾形 貴史工藤 俊牧野 孝俊蓮沼 綾子
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2014 年 75 巻 3 号 p. 648-651

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抄録

症例は32歳,女性.2004年7月(当時25歳)に左乳癌に対し乳房部分切除と腋窩リンパ節郭清を施行した.術後CMF療法・放射線療法(50Gy)を施行し,以降再発なく経過観察した.2009年10月に左乳房を打撲したとのことで受診.黄色調の内出血を認めるのみで経過観察となったが,2010年3月,改善せず再び受診.打撲部が腫瘤様に変化していたため,針生検を施行したところ放射線誘発血管肉腫が考えられた.他に遠隔転移なく,同年4月,左乳房切除術と分層植皮術を行い,術後補助化学療法を施行するも,約1年で再発し,その後4カ月の経過で急激な転帰を辿り永眠した.放射線誘発血管肉腫は,放射線照射部位に生じる,極めて予後不良な疾患である.頻度は少ないが,乳房温存術後放射線照射が普及している中で,本疾患はその弊害として注目すべき疾患と考えられる.今回,われわれは術後5年8カ月で発症した放射線誘発血管肉腫を経験したので,併せて文献的考察を加えて報告する.

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© 2014 日本臨床外科学会
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