2014 年 75 巻 4 号 p. 911-916
症例は74歳の女性で,盲腸癌術後の定期受診日の数日前に右胸壁のしこりを自覚した.触診で右胸壁皮下に2cm大の可動性不良の腫瘤を触知した.超音波検査では,腫瘤は不整形低エコー像を呈し,皮下から筋層に一部食い込み,造影CT検査では造影効果を伴っていた.FDG-PETでは同部位のみにFDG異常集積を認めた.腫瘤切除を施行したところ腫瘍は皮下および筋層に浸潤しており,1.8×1.5×1.2cm大の境界明瞭の充実性腫瘤で乳白色~灰白色調を呈していた.病理組織診断では紡錘形細胞の増殖,炎症性細胞も混在し,免疫組織染色ではvimentin(+),α-smooth muscle actin(+),S-100(-),c-kit(-)であった.
以上より,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍と診断した.胸壁皮下発生の炎症性筋線維芽細胞性腫瘍の報告はなく,非常にまれな症例と考えられた.