2015 年 76 巻 10 号 p. 2399-2403
症例は82歳の痩せ型男性.嘔吐を主訴に来院した.4カ月前から食欲が低下し,体重が減少した.腹部CTで,腎門部レベルに短径42mm大の腹部大動脈瘤と十二指腸水平脚から口側腸管の拡張が明らかになった.十二指腸水平脚周囲の脂肪の減少と腹部大動脈瘤の隆起により,大動脈と上腸間膜動脈の角度が狭小化し,腸閉塞が起きていた.われわれは全身状態の評価をしたのち,十二指腸腔腸バイパス術を行った.患者は術後に経口摂取ができるようになり,体重も増加し2カ月後に退院した.
腹部大動脈瘤が上腸間膜動脈症候群を起こすことは少数報告されている.今回,体重減少との関連を示唆する症例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.