抄録
症例は93歳,女性.胃癌にて幽門側胃切除術(Billroth I法再建術)を施行した.術後2日目に呼吸苦の訴えがあり,心不全を疑いドパミン・フロセミドの投与を開始した.術後3日目の心エコー検査で心尖部壁運動の低下と,採血でトロポニンT陽性がみられ急性心筋梗塞あるいはたこつぼ型心筋症を疑った.心臓カテーテル検査にて冠動脈に狭窄所見がみられなかったため,たこつぼ型心筋症と診断し直ちにドパミンの投与を中止した.呼吸不全状態が出現したため非侵襲的陽圧換気(non-invasive positive-pressure ventilation:NPPV)による呼吸管理を開始し,術後7日目に離脱した.心エコーにおける心尖部壁運動の異常は治療開始から約2週間で改善がみられた.今後,高齢者の手術症例が増加するなかで,たこつぼ型心筋症の診断から加療について周知しておくことは外科医にとっても重要であると思われる.