2015 年 76 巻 10 号 p. 2488-2492
症例は70歳,女性.右側腹部痛を主訴に当院を受診した.Hb 4.7g/dLの貧血があり,上下部消化管内視鏡検査の結果,上行結腸癌と十二指腸浸潤の診断となった.胸腹部造影CTでは遠隔転移はなかったものの,上腸間膜静脈内に腫瘍塞栓を認めた.入院7日目に結腸右半切除と十二指腸局所切除を施行した.腫瘍塞栓部分の上腸間膜静脈の切除も併せて行ったため,鬱血となった小腸約250cmの切除を余儀なくされた.術後,下痢と電解質異常を生じたが自然軽快した.退院後,補助化学療法としてFOLFOXを10コース施行した.現在,術後9カ月が経過しているが,無再発で経過している.上腸間膜静脈に腫瘍塞栓を伴った大腸癌は稀であり,その手術報告はこれまでに5例のみである.若干の文献的考察を加えて報告する.