2015 年 76 巻 3 号 p. 631-636
症例は59歳,女性.睡眠薬を服用した状態で乗用車を運転し,意識を消失して電柱に衝突し救急搬送された.右側腹部の疼痛を訴えたが,経過観察となった.約1カ月後より右側腹部の膨隆を自覚し,徐々に増大するため当科を受診した.右側腹部に長径15cmの無痛性,弾性硬の腫瘤を触知し,画像検査と併せてヘルニア内容を横行結腸とする上腰ヘルニアと診断した.交通事故の際のシートベルトによる急激な腹圧の上昇がヘルニア発症の原因と考えられた.Parietex Optimized Composite MeshTM(PCO)を用いて腹腔内経路での腹腔鏡下腰ヘルニア修復術を施行した.術後第3病日に合併症なく退院し,術後9カ月の経過観察で再発や慢性疼痛などの有害事象は認めていない.腰ヘルニアは稀な疾患で腹腔鏡手術の報告は少ないが,従来の術式と比べ低侵襲で整容性の点でも有用であり,術後在院期間を短縮しうると考えられた.