2015 年 76 巻 4 号 p. 726-731
比較的稀な食道神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は60歳の男性.心窩部痛を主訴に近医受診し,上部消化管造影にて食道の陰影欠損を指摘され当院紹介受診となった.上部消化管内視鏡検査では下部食道に表面平滑な粘膜下腫瘍を認めた.胸部CTでは下部食道に85×50mmの造影効果を伴わない腫瘤を認めた.確定診断のためEUS-FNAを勧めたが同意を得られず,食道粘膜下腫瘍の診断にて手術を施行した.下部食道に10cm大の腫瘍を認め,周囲への浸潤は認めなかったが,腫瘍核出は困難であり下部食道切除を行った.切除標本は100×58×65mmの腫瘍で,割面は黄白色調の充実性腫瘤であった.組織学的には紡錘形細胞が錯綜性に増殖し,免疫染色ではS-100蛋白は陽性,SMA・c-kit・CD34は陰性で神経鞘腫と診断された.食道神経鞘腫は稀であり,文献的考察を加え報告する.