抄録
長期透析患者の透析アミロイドーシスによる小腸穿孔の1例を経験した.症例は62歳の男性で,30歳時に血液透析導入された.47歳時に左手根幹症候群に対して左手根幹開放術を施行され,その後も,骨関節障害に対して複数回の手術を施行されていた.発熱・腹痛を主訴に当院を受診され,腹部CT検査で回腸に限局的な壁肥厚と腸間膜脂肪識の濃度上昇を認めた.また,肥厚した腸管壁に一部欠損がみられ,壁外にガス像が連続していた.以上より,小腸穿孔と診断し緊急開腹術を施行した.回腸に穿孔部を1箇所認め,穿孔部を含めて小腸を部分切除し,一期的に機能的端々吻合を行った.病理組織学的に穿孔部周囲の粘膜下層と血管周囲にアミロイドの沈着を認めた.術後,嘔吐と難治性下痢を認めたが,術後52病日で転院された.経過中に縫合不全を示唆する所見は認めなかった.