日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
臍炎様症状が診断の契機となったS状結腸癌臍転移の1例
大佛 智彦米山 克也笠原 彰夫山本 裕司利野 靖益田 宗孝
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 76 巻 4 号 p. 838-843

詳細
抄録

悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Joseph's noduleと呼ばれ,予後不良な徴候として知られている.今回,臍炎様症状が診断の契機となったS状結腸癌臍転移の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は90歳,女性.臍部の発赤を主訴に前医を受診,臍周囲炎の診断にて処置を繰り返していたが改善しないために,2週間後に当科へ紹介受診された.触診で臍部に約2cm大の硬結を触知し,浸出液と悪臭を認め,悪性腫瘍の臍転移を疑い生検し腺癌の臍転移と診断された.全身精査にてS状結腸癌の臍転移,肝転移と診断された.開腹所見と病理組織学的検査より,臍転移の転移様式は血行性転移が最も疑われた.治療は,患者が超高齢者でありQOL改善目的でS状結腸切除+臍切除を施行した.退院後は対症療法が中心となり,6カ月後に死亡した.臍腫瘤を認めた場合,本症を念頭に置き早期診断・治療を行うことが重要である.

著者関連情報
© 2015 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top