2015 年 76 巻 4 号 p. 857-862
症例は43歳の女性で,検診時の腹部超音波検査で肝腫瘍を指摘され,当院へ紹介となった.腹部CT検査で肝S4に尾側へ突出する造影効果を伴う14mm大の腫瘍を認めた.肝腫瘍を疑い,腹腔鏡手術を施行した.術中所見では,腫瘍は胆嚢体部より発生しており,肝との連続性は認めなかったため,胆嚢摘出術を施行した.病理組織学検査では腫瘍成分は認めず,肝小葉構造からなり,異所性肝と診断した.異所性肝は自覚症状に乏しく,他疾患のスクリーニング時や手術時などに偶然発見される場合がほとんどであるが,肝細胞癌へ進展する例も報告されている.今回,術前診断に苦慮した胆嚢に生じた異所性肝の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.