抄録
症例は61歳,女性.平成16年に中部胆管癌に対し膵頭十二指腸切除術(PD)を施行,その後は無再発であったが,平成23年に全身倦怠感を主訴に来院された.CTとMRIにて肝後区域に多発した腫瘤を認め,後区域胆管に腫瘍の存在が示唆された.PD術後の胆管断端再発または肝内胆管癌を疑い手術の方針とした.PD術後の胆管断端再発の場合を考慮して,胆管空腸吻合部を含めた肝拡大右葉切除術を施行した.病理組織標本にて後区域に多発した腫瘤はすべて膿瘍であり,胆管空腸吻合部近傍の後区域胆管に腫瘍を認めた.腫瘍は吻合部からは離れており,その大部分が内腔の乳頭状部分であったことから,吻合部再発でなく異時性に発生した肝内胆管癌と診断された.術後経過は良好にて術後20日目に退院,現在も無再発生存中である.PD術後7年目に発生した異時性胆管癌に対し肝切除を行い,良好な経過をとることができたので,若干の肝文献的考察を加え報告する.