抄録
症例は44歳,女性.下痢,皮膚掻痒感,半年間で4kgの体重減少あり近医受診し,腹部超音波とCTで膵頭部腫瘤を指摘され当院紹介となった.閉塞性黄疸のため,PTCDにて減黄を行った.ERCPにて細胞診を行い,免疫染色の結果は膵神経内分泌腫瘍の診断となった.腫瘍径は8.4cmあり,明らかな転移はなかったが,門脈・脾静脈に腫瘍栓を認め肝動脈浸潤も疑われたため,切除困難であると判断しエベロリムス内服とソマトスタチンアナログ筋注による化学療法を行った.7カ月後に腫瘍径は5cmに縮小した.門脈腫瘍栓は残存したが,肝動脈と腫瘍は離れ切除可能と判断し手術施行する方針とした.膵頭十二指腸切除,門脈合併切除(5cm),右外腸骨静脈を用いた門脈再建を行い根治切除した.術前化学療法施行後に根治手術を行った症例はまれであり若干の文献的考察を加えて報告する.