日本臨床外科学会雑誌
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症例
87歳肝血管腫自然破裂の1例
志村 充広水間 正道元井 冬彦片寄 友高瀬 圭海野 倫明
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2015 年 76 巻 6 号 p. 1469-1473

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抄録

症例は87歳,女性.30年前に肝血管腫に対し肝外側区域切除術の既往がある.7年前より肝尾状葉に5cm大の血管腫が指摘されていたが,増大傾向は認めなかった.2014年2月に外傷の既往なく突然の胸痛を自覚し,前医を受診,造影CT検査で肝尾状葉の血管腫から腹腔内へ造影剤の漏出を認め,肝血管腫の自然破裂と診断され,加療目的に当院に緊急搬送された.経カテーテル的動脈塞栓術を施行し止血した.術後合併症なく経過,再出血のリスクも考えられたが,超高齢であることを考慮し十分にインフォームドコンセントの上,肝切除は行わない方針とし,第15病日に退院となった.現在,術後12カ月経過したが,再破裂なく経過している.肝血管腫の自然破裂はまれであり,本症例は本邦報告例では最高齢である.経カテーテル的動脈塞栓術後に肝切除せず経過観察とした報告もなく,治療方針に関して今後の参考になる症例と考えられ,文献的考察を加え報告する.

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