抄録
症例は2010年に他院にて心臓弁膜症に対する弁置換術を施行した90歳の男性である.経過観察中に肝S4を中心とする直径12cmの肝細胞癌を指摘され,加療目的で当科受診となった.肝炎ウイルスの感染を認めず.肝動脈塞栓化学療法を2回施行したが縮小効果なく,造影CTとMRIで腫瘍のviability残存を認め,破裂の可能性も考慮し肝部分切除術を予定した.中肝静脈は腫瘍に圧排され同定困難であった.術前ICG R15は16%であった.術中,肝外側区域に膿瘍を認め,拡大肝外側区域切除術に変更した.また,中肝静脈に腫瘍栓を認め,中肝静脈切開の上,腫瘍栓を除去した.病理診断はpT3,Stage IIIであった.経過は良好で,術後第20病日に独歩にて退院した.肝胆膵悪性疾患に対する手術は,ときに大きな侵襲を伴うが,超高齢者でも全身状態が良好であれば,適切な周術期管理を行うことにより安全に施行できると考えられた.