抄録
症例は79歳,女性.5年前に胃癌に対して胃全摘術(第2群リンパ節郭清およびRoux-en-Y再建)が施行された.最終病理結果は低分化型腺癌,pT2(MP) N0 M0 Stage IBで,術後のadjuvant chemotherapyは行わず,定期的に経過観察されていた.今回行われた定期の下部消化管内視鏡検査にて大腸内に多発する粘膜下腫瘍様隆起性病変を認め,生検にて低分化型腺癌と診断された.CTとPET検査では明らかな肺・肝転移や播種を認めず,大腸亜全摘術を施行.病理検査(免疫染色)の結果,粘膜下を中心に前回の胃癌と同様の腫瘍細胞を認め,胃癌の多発大腸転移と診断した.転移性大腸癌は大腸癌全体の0.1~1%と稀で,ほとんどは進行癌からの転移である.Stage I胃癌の単独大腸転移は極めて稀であり,本邦では自験例を含めわずか4例に過ぎない.若干の文献的考察を加えて報告する.