抄録
症例1:63歳,男性.肝転移を伴う直腸癌に対し,高位前方切除術を施行した.病理組織所見で低分化型腺癌の一部にinside out patternを含んでおり,micropapillary carcinoma (MPC)と診断された.また,高度の脈管侵襲と多発リンパ節転移も認めた. 症例2:59歳,女性.子宮頸癌の精査中に直腸癌と診断された.子宮頸癌に対しては放射線化学療法を行う方針として,直腸癌に対しHartmann手術を施行した.病理組織所見でMPCを含んだ高~中分化型管状腺癌と診断された.リンパ節転移はなかったが,症例1と同様に高度の脈管侵襲を認めた.MPCは高率にリンパ節転移,遠隔転移をきたす悪性度の高い癌であると考えられているが,大腸MPCの報告は少ない.今回われわれは直腸MPCの2手術症例を報告し,本邦報告例を集計して臨床病理学的な特徴を検討した.