2016 年 77 巻 2 号 p. 423-429
症例は54歳,女性.以前より肝機能障害を指摘されていた.スクリーニングで施行された近医でのCTにて,肝腫瘤を指摘され当科紹介受診となった.造影CTにて,肝S6辺縁に周囲の造影効果を伴い中心部が造影されない直径10mmと15mmの腫瘤を認めた.MRIにて,腫瘍はT1強調画像で低信号,T2強調画像は淡い高信号,拡散強調画像でも淡い高信号を呈した.病変が小さく,確定診断が困難であったため経過観察としたところ,増大を示したため診断的治療目的に肝S6の部分切除術を行った.病理組織学的検査にて,線維芽細胞の混在した線維性成分が増生し,多彩で著明な炎症細胞浸潤を認め肝炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor,以下IPTと略記)と診断した.血液検査にて,慢性活動性のEpstein-Barr virus(以下EBVと略記)感染状態を示していたことから,EBV感染を伴う肝IPTと診断した.