抄録
症例は53歳,女性.慢性的な下痢に対し大腸内視鏡検査を施行予定であったが,前処置でイレウスを発症した.後日施行された大腸内視鏡検査にて,直腸S状部に全周性の粘膜下腫瘍様病変による狭窄を認めた.生検は悪性所見を認めなかった.CTでは上部直腸に壁肥厚像を認めた.リンパ節転移や他臓器への転移は認めず,腹腔鏡下低位前方切除術,横行結腸人工肛門造設術を施行した.病理診断では粘膜下層から漿膜下層に高分化管状腺癌を認め,免疫染色ではCK7陽性・CK20陰性であった.非典型的な大腸癌であり,原発不明癌として術後化学療法を検討したが患者が希望しなかったため経過観察のみとし,2年4カ月経過したが再発・転移を認めず,人工肛門閉鎖術を施行した.原発不明癌との鑑別を要し,肉眼的および組織的に特異な形態を呈した大腸癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.