日本臨床外科学会雑誌
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症例
急激な経過で死亡したClostridium perfringensによる小腸壊死の1例
庄古 知久漆畑 直村田 希吉
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2016 年 77 巻 5 号 p. 1098-1104

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抄録

症例は46歳,男性.腹部膨満感と大量下血にて当センターに救急車で搬入となった.来院時は意識清明,発熱,ショック症状なし.血液検査にて溶血所見なし.腹部超音波にて腸管の著明な拡張と腸管壁の浮腫,腹水の貯留を認めた.X線検査の終了間際に一時的に心肺停止となった.腹部造影CTで門脈内にガス像を伴う広範な腸管壊死と診断し緊急開腹とした.腹水は黄色透明であったが全腸管は著明に拡張し,小腸が約1mにわたり壊死しており同部を切除した.手術終了間際に再度心停止し,蘇生を行いながら手術室を退室となった.ICUにて経皮的人工心肺補助装置を導入し,エンドトキシン吸着療法を開始した.集中治療を継続したが来院後約7時間半で死亡した.病理解剖では回腸は広範囲な偽膜性出血性腸炎像を呈し,全層性の壊死の状態であった.組織診断で壊死回腸の表層にグラム陽性桿菌を多数検出し,免疫染色にてClostridium perfringens感染が確認された.来院後に急激に死亡したC. perfringens菌感染症の本邦報告24例を集計し,その特徴も報告する.

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© 2016 日本臨床外科学会
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