抄録
症例は67歳,女性.6年前,十二指腸潰瘍穿孔で緊急開腹穿孔部閉鎖術を受けた.その1年後から,上腹部正中切開創に一致した膨隆が出現.さらに3年後に,胃幽門部潰瘍を指摘され内科的治療を継続していたが,治癒傾向が乏しく難治性胃潰瘍の原因として腹壁瘢痕ヘルニアが疑われ当科へ紹介受診となった.胃内視鏡検査では幽門輪部にA2 stage潰瘍を認めた.腹部造影CT検査では上腹部正中に7×6cmのヘルニア門より幽門前庭部が脱出し,右胃大網静脈に造影剤の停滞を認めた.以上の所見から,胃の一部が脱出する腹壁瘢痕ヘルニアにより右胃大網静脈のうっ滞が生じ胃潰瘍治癒が遷延していると考え,腹壁瘢痕ヘルニア修復術を施行した.術後41日目の胃内視鏡検査では,潰瘍底の大半が再生上皮に覆われS1 stageとなっていた.今回,腹壁瘢痕ヘルニア修復術により難治性胃潰瘍の治癒傾向が得られた1例を経験したので,その病態を中心に文献的考察を加え報告する.