日本臨床外科学会雑誌
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大腸癌を契機に発症した後天性血友病の1例
岡山 卓史吉田 順一奥村 幹夫宮竹 英志中原 千尋大谷 和広
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2016 年 77 巻 9 号 p. 2241-2246

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抄録

後天性血友病とは出血歴や家族歴がない非血友病者に凝固因子に対するインヒビターが出現することにより,出血症状を呈する疾患である.近年報告が増加しているが,まれな疾患である.症例は83歳の女性.上行結腸癌に対して腹腔鏡下右半結腸切除を施行していた.術後は特に問題なく自宅退院していた.術後1カ月以上経過して右上腕血腫,activated partial thromboplastin time(APTT)が延長する凝固系の異常から後天性血友病と診断し,適切な治療により完解へ至った.死亡率が高率であるため,本疾患が疑われる際には,場合により確定診断を待たずに治療を開始する必要があるといわれている.また高齢者に多く,自己免疫疾患や悪性腫瘍等の基礎疾患のある患者が半数以上を占めるとされている.原因不明の出血症状,APTTの延長を認めた際には後天性血友病も念頭に置く必要がある.

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