抄録
症例は65歳,男性.平成19年に右鼠径ヘルニアに対し,当科でヘルニア根治術(Kugel法)を施行した.平成25年より右下腹部に硬結が出現したが,経過観察していた.平成27年8月に膿尿を主訴に当院泌尿器を受診した.CTの結果,腹膜前腔膿瘍の診断となり,同年10月に当科紹介となった.膿瘍に対する経皮的ドレナージ・膿瘍造影を施行すると,腹膜前腔膿瘍は虫垂および膀胱と連続しており,遅発性メッシュ感染が虫垂・膀胱と瘻孔形成していると判明した.このためメッシュ除去術,虫垂切除術,膀胱部分切除術を施行した.術後に創部感染および膀胱瘻の再開通を認めたが,保存的に改善した.以後,感染の再燃はないが,軽度の腹壁瘢痕ヘルニアを認めている.鼠径ヘルニア術後の遅発性メッシュ感染に関しては,本邦でも報告例が散見される.しかし自験例のように,膿瘍が虫垂・膀胱と同時に瘻孔形成した症例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.