2017 年 78 巻 2 号 p. 371-375
症例は83歳,女性.腹痛と肝機能障害の精査目的に,当院に紹介された.精査にて胆管癌の診断となり,膵頭十二指腸切除術が施行された.門脈前面で膵を切離した後に膵頭部を門脈右側から剥離した.その際,膵鈎部が門脈の背側に延長していることが確認された.さらに剥離を左に進めると,膵鈎部は門脈左縁で膵体部に癒合することが確認された.術前CTを再検討すると指摘可能であり,門脈輪状膵と診断した.膵管は1本で門脈腹側を通過していた.膵頭部を門脈と脾静脈から剥離授動し,癒合部より左の膵体部で再切離した.これにより,通常通りの膵管空腸吻合と膵空腸密着縫合が可能になった.術後,膵瘻を合併したが保存治療で軽快し退院した.門脈輪状膵を有する患者に膵頭十二指腸切除術を施行する際は,膵の切離再建方法について検討を要する.しかし,同様の症例は非常に稀であり,標準的な手術方法は確立されていないため,文献的考察を加えて自験例を報告する.