日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝原発MALTリンパ腫の1例
松本 亮橋本 敏章北島 正親長置 健司伊藤 裕司古井 純一郎
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2017 年 78 巻 3 号 p. 571-577

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抄録

症例は40歳,男性.健康診断の腹部超音波で肝腫瘍を指摘された.血液生化学検査で,肝機能異常は認めず,ウイルスマーカーは陰性,腫瘍マーカーは基準値内であった.肝S6に足側に突出する36mmの腫瘤は,造影CTで動脈相から門脈相にかけて淡く造影され,その後wash outをされた.鑑別診断として,肝細胞癌や孤立性線維性腫瘍や限局性結節性過形成,肝細胞線種などの良性腫瘍が考えられたが,経皮経肝的腫瘍生検は播種の危険性があるため,肝部分切除術を施行した.摘出標本は表面平滑,弾性・軟で境界やや不明瞭,黄白色調充実性の単結節腫瘍であった.病理組織学的所見では,門脈領域にリンパ濾胞を伴い小型から中型の著明なリンパ球浸潤が認められた.免疫染色ではCD3(+),CD20(++),CD10(-),bcl-2(+)を示し,MALTリンパ腫と診断された.肝原発MALTリンパ腫は比較的まれな疾患であるが,非特異的な画像所見を呈する肝腫瘤では鑑別にあげる必要があると考えられた.

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