日本臨床外科学会雑誌
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症例
進行胆嚢癌と鑑別が困難だった門脈血栓症併発無石性慢性胆嚢炎の1例
山本 隆嗣渡辺 千絵宮崎 徹金田 和久大河 昌人上西 崇弘白石 友邦若狭 研一
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2017 年 78 巻 3 号 p. 578-584

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抄録
症例は68歳,女性.胆嚢内腫瘍を指摘されて来院した.血液生化学検査ではCEAとCA19-9は正常で,WBC 23,920/μL,CRP 9.14mg/dLであった.MRCPで胆嚢内に径2cmの腫瘤を認め,dynamic CTでは加えて門脈本幹から肝内門脈左枝の塞栓が見られ,PET-CTで胆嚢内腫瘍・門脈塞栓・傍大動脈リンパ節に高度集積を認めた.急性胆嚢炎を併発した進行胆嚢癌と診断し開腹胆嚢摘出術を施行したが,病理検査では腫瘤はフィブリン・凝血塊であった.無石性胆嚢炎より生じた反応性リンパ節炎と門脈内血栓と診断訂正した.Heparin/edoxaban投与で門脈血栓は縮小,外来で経過観察中である.胆嚢炎のみによる門脈血栓症はまれで,内外で20例の報告があるのみである.PETで高SUVを呈する血栓もあり,こういった病態もあることを念頭に置いて診療に臨むことも肝要であると考えられた.
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