2017 年 78 巻 5 号 p. 1014-1018
患者は76歳,女性.夜間就寝中に突然臍周囲痛が出現し,当院に救急搬送された.腹部全体に圧痛・筋性防御を認め,腹部造影CT検査では上下腸間膜動静脈の閉塞は認めなかったが横行結腸壁の造影効果が不良であったため,壊死型虚血性大腸炎を疑い緊急手術を施行した.開腹時,盲腸からS状結腸まで全結腸の漿膜が斑状に暗紫色を呈し,全結腸型壊死型虚血性大腸炎と診断し,全結腸切除および回腸瘻造設術を施行した.病理検査では全結腸に及ぶ粘膜・筋層の壊死を認めた.全結腸型壊死型虚血性大腸炎は極めて稀であるが致死率が高く,救命のためには本疾患を積極的に疑い,早期診断・早期手術を行うことが肝要である.