日本臨床外科学会雑誌
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症例
保存的に軽快したグリセリン浣腸による直腸穿孔の2例
大川 尚臣古田 斗志也金川 泰一朗小畑 卓司野上 浩實
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2017 年 78 巻 5 号 p. 1041-1049

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抄録

症例1は63歳,男性.虚血性腸炎で入院加療中に排便困難のため,グリセリン浣腸(glycerin enema:以下GE)を施行した.直後から肛門痛と下血および血尿を認めた.肛門鏡にて歯状線近傍に裂傷と,腹部CTにて直腸周囲の脂肪織濃度上昇と遊離ガス像を認め,直腸穿孔と診断した.絶食と輸液・抗生剤投与を行い,血尿に対し強制利尿とハプトグロビンを投与した.腎不全には至らず,保存的に軽快した.症例2は78歳,男性.頸椎損傷で施設療養中,便秘に対しGEを施行した.粘血便が出現し,下部消化管内視鏡で直腸壁損傷を,腹部CTにて直腸壁肥厚,壁内気腫と直腸周囲遊離ガスを認め,直腸穿孔と診断した.血尿や溶血はなく,絶食と輸液・抗生剤投与のみで軽快した.GEの誤注入による直腸壁の損傷は急性腎不全や腹膜炎等の重篤な合併症をきたすことがある.今回,われわれはGEによる直腸穿孔の2例を経験したので考察を加え報告する.

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