2017 年 78 巻 5 号 p. 1055-1059
症例は37歳,女性.39℃を超える発熱を主訴に当科紹介受診となった.血液検査所見ではWBC 8,820/μl,Neut 73.4%,CRP 13mg/dlと炎症反応上昇を認めた.腫瘍マーカー陰性.造影CT,造影MRIでは内部に出血を伴う血管腫の所見であった.PET-CT,ガリウムシンチにて異常集積は認めなかった.感染症内科,血液内科にコンサルトしたところ,血液疾患や膠原病はいずれも否定的で,熱源は肝血管腫以外認めなかった.2週間以上持続する発熱を伴い,腫瘍内部に出血もみられたため,本人と家族に十分なICを行った上,手術を行う方針となった.肝機能温存を考慮し,術式は拡大肝後区域切除術を選択した.術後は4日目に解熱が得られ,術後9日目に自宅退院となった.肉眼所見は海綿状血管腫であった.肝血管腫の手術適応として,破裂の危険のあるものや随伴症状があるものとされているが,発熱のみを主訴とする報告は稀であり手術適応決定に苦慮したが,良好な結果を得たため報告する.