日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
発熱を呈し手術適応に苦慮した出血性肝血管腫の1例
井口 詔一播本 憲史池上 徹副島 雄二吉住 朋晴前原 喜彦
著者情報
キーワード: 肝血管腫, 手術, 発熱
ジャーナル フリー

2017 年 78 巻 5 号 p. 1055-1059

詳細
抄録

症例は37歳,女性.39℃を超える発熱を主訴に当科紹介受診となった.血液検査所見ではWBC 8,820/μl,Neut 73.4%,CRP 13mg/dlと炎症反応上昇を認めた.腫瘍マーカー陰性.造影CT,造影MRIでは内部に出血を伴う血管腫の所見であった.PET-CT,ガリウムシンチにて異常集積は認めなかった.感染症内科,血液内科にコンサルトしたところ,血液疾患や膠原病はいずれも否定的で,熱源は肝血管腫以外認めなかった.2週間以上持続する発熱を伴い,腫瘍内部に出血もみられたため,本人と家族に十分なICを行った上,手術を行う方針となった.肝機能温存を考慮し,術式は拡大肝後区域切除術を選択した.術後は4日目に解熱が得られ,術後9日目に自宅退院となった.肉眼所見は海綿状血管腫であった.肝血管腫の手術適応として,破裂の危険のあるものや随伴症状があるものとされているが,発熱のみを主訴とする報告は稀であり手術適応決定に苦慮したが,良好な結果を得たため報告する.

著者関連情報
© 2017 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top