2017 年 78 巻 6 号 p. 1375-1380
症例は69歳の男性で,健診で肝腫瘤を指摘され当科を紹介受診した.9年前に当科で膵腫瘍に対して膵頭十二指腸切除術を施行され,solid-pseudopapillary neoplasm (SPN)と診断されており,5年間の経過観察では明らかな再発は認められなかった.腹部造影CTで肝S4/8ドーム下に50mm大の腫瘤を認めた.Cancer boardで討議の結果,SPNの肝転移再発と診断し,腹腔鏡下肝部分切除を施行した.前回手術創の直下に癒着を認めたが,腹腔鏡手術の特性を生かし癒着剥離は最小限度に留めた.肝離断においても拡大視効果により慎重にグリソン枝を結紮・切離し,胆汁漏出などなく切除しえた.病理組織学的検査でSPN肝転移の診断となった.明らかな合併症はなく術後第7病日に軽快退院され,現在術後1年を経過し無再発生存中である.