抄録
症例は66歳の女性,主訴は血便.精査で肛門管内に3cm大の1型腫瘍を認め,肛門管腺癌cT2N0M0 Stage Iの診断となった.周囲粘膜と肛門皮膚に有意な所見は認めず,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.標本上も腫瘍以外に肉眼的所見を認めなかったが,病理組織学検査では癌周囲の表皮内にPaget細胞の浸潤を認めた.免疫染色の結果はCK20(+)CK7(-)GCDF15(-)であり癌部と一致し,pagetoid spread(PS)を伴う肛門管腺癌(全体の最大径102mm,pT2pN0M0,ly1,v2,PM0,DM0(3mm),RM0)と診断された.PSは悪性腫瘍が原発巣から表皮内へ経上皮性に浸潤する病態である.肛門管癌にPSを伴う場合は切除範囲が重要となるが,自験例では広範囲にPSが存在したものの肉眼的所見を認めず術前評価が困難であった.肛門管癌の診療にあたる際はPSの可能性を念頭に置く必要がある.