抄録
76歳,女性.心窩部痛を主訴に救急搬送された.開腹歴なし.左鼠径部腫瘤を触知し,単純X線で小腸ガスを認め,左鼠径ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断された.用手的整復後,経過観察入院となった.腸閉塞の改善がなく,翌日の造影CTで右坐骨孔に腸管脱出を認め,右坐骨ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術となった.腹腔鏡下観察で右坐骨ヘルニアを認めたが,嵌頓は既に解除されていた.腸管壊死を疑い開腹すると,回腸にRichter型嵌頓を起こしていた所見があった.壊死所見なく腸切除はしなかった.ヘルニア門は卵巣等周囲組織で被覆閉鎖した.術後は肺炎などのため,第35病日に退院となった.腹壁ヘルニア嵌頓時には他のヘルニアの合併に留意し,嵌頓解除後の症状観察が重要である.坐骨ヘルニアの診断・治療方針の決定に造影CT,腹腔鏡観察が有用であった.