抄録
61歳,男性.未治療の慢性B型肝炎があり,高血圧にて通院中の近医よりAFP高値のため紹介となった.精査にて,肝硬変に加え肝S4に門脈左枝と接し一部は内腔に突出する肝細胞癌(cT1N0M0)を認め,肝左葉切除術ならびに胆嚢摘出術を施行した.病理検査では,中分化型を主体に低~未分化型成分を混ずる単純結節型肝細胞癌と診断された(pStage I).術後に低下した腫瘍マーカーが術後5カ月目に急上昇し,残肝全体に動脈血流が豊富な多発再発腫瘍が確認される一方,肝外転移は認められなかった.肝動脈化学療法を選択し,シスプラチンと5FUを持続投与したところ著明な効果が得られ,2回目の投与後には腫瘍マーカーは正常化し,再発腫瘍の消失をみた.その後のエンテカビル投与によりHBV DNAは陰性化した.本症例は,現在までの術後約9年間,追加の抗癌治療なく無再発にて経過しており,若干の考察を加えて報告する.