2018 年 79 巻 9 号 p. 1885-1889
症例は63歳,男性.腹部超音波検査で偶発的に腹腔内腫瘤を指摘され,CTで上行結腸肝弯曲部において重積所見を認め,大腸内視鏡検査で腸重積と診断された.腸重積による臨床症状を認めなかったことから待機的手術の方針となり,腹腔鏡下結腸右半切除術を施行された.病理組織像では地図状の胞巣を形成し,高度のリンパ球浸潤を伴う増殖を認め,髄様癌と診断された.術後は合併症なく経過し,術後8日目に退院となった.
大腸髄様癌は取扱い規約第8版に初めて記載された比較的新しい概念の組織型である.大腸髄様癌は特徴的な組織像を伴い,右側結腸に好発,比較的予後良好である.膨張性に増殖するため腫瘍径は比較的大きく,発見時には既に漿膜面に浸潤していることが多い.今回,腸重積症を契機に発見された上行結腸髄様癌の1例を経験したため,結腸腸重積の臨床的特徴も踏まえ,若干の文献的考察を加えて報告する.