日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
救急現場での輪状甲状靱帯切開にて救命し得た顔面外傷の1例
小林 誠人冨岡 正雄中村 雅彦松山 重成宮本 哲也川崎 英之中山 伸一小澤 修一
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2005 年 8 巻 5 号 p. 373-377

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抄録

車内閉じ込め現場で輪状甲状靱帯切開を施行し低酸素血症を回避し得た顔面外傷を伴う重症頭部外傷例を経験した。症例は20歳,男性で乗用車の横転事故にて受傷した。ドクターカー現場到着時,患者の顔面は乗用車のサイドピラーと地面に挟まれた状態で運転席に閉じ込められていた。サイドピラーを離断し観察を施行した。意識レベルはGCS E1-V1-M1,自発呼吸は弱く認めたものの,口唇の裂挫創,大量の回腔内血液貯留のため気道閉塞状態であった。撓骨動脈は触知可能であった。状況より経口気管挿管による気道確保は困難と判断し,輪状甲状靱帯切開を施行した。気管内より大量の血液を吸引,補助換気下に車外救出を施行した。主な外傷は顔面損傷,頬骨骨折,頭蓋底骨折,びまん性脳損傷などであったが,集中治療の後,第19病日独歩で後方病院へ転医となった。輸状甲状靱帯切開は救急現場でも施行可能な迅速,確実な気道確保の方法であり, ドクターカーに乗車する救急医の必須手技の1つと考える。

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© 2005 日本臨床救急医学会
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