抄録
症例は81歳,男性.上部消化管内視鏡検査で,胃体中部小弯から後壁にかけての3型病変を認め,生検を行い腺癌の診断であった.造影CT検査で#1,#3リンパ節が高度に腫大.血管走行を確認すると,左胃動脈から左頭側に伸びる発達した枝があり,冠動脈前下行枝へ流入していることを確認した.術前診断cT3N2M0,Stage IIIAの胃癌に対して,腹腔鏡下幽門側胃切除術を行う方針としたが,側副血行路が発達して心筋を栄養している可能性を考え,術中にクランプ鉗子を用いて左胃動脈の血流を遮断後に経食道心エコーと2誘導心電図を用いたモニタリングで5分間観察を行い,虚血性の変化がないことを確認した後に,左胃動脈を根部で切離し,安全に手術を終了した.左胃動脈と冠動脈との交通は極めて稀である.冠動脈と交通している動脈を処理する際には,術前や術中の生理学的所見の準備を行い,また,手術手技の工夫が必要であると考えた.