2019 年 80 巻 4 号 p. 681-685
術前ホルモン療法によって病理学的完全奏効を得た乳癌症例を経験した.症例は82歳,女性.外陰部Paget病精査のCT検査で左乳房A領域に径14mm大の腫瘤を指摘され,当科を受診した.針生検にて浸潤性乳管癌,ER陽性,PgR陽性,HER2/2+,cT1cN0M0,Stage Iと診断した.Paget病の治療を優先するため,乳癌に対して術前ホルモン療法として,アナストロゾール投与を開始した.治療開始7カ月時点で腫瘤径は11mmと軽度縮小したが,その後縮小傾向を示さず,14カ月目に左乳房切除術とセンチネルリンパ節生検を施行した.術後病理所見で遺残癌細胞を認めず,完全奏効と診断した.術後1年の時点で再発を認めず,ホルモン療法を継続している.