2019 年 80 巻 7 号 p. 1365-1369
症例は62歳,男性.膵尾部に5cm大の腫瘤に対する超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)により膵癌と診断し,膵体尾部切除を施行した.病理診断は中分化型管状腺癌pT3 N1 M0 fStage II Bであった.術後にS-1による補助化学療法を行っていたが,術13カ月後に吐血を主訴に受診された.上部内視鏡検査で胃体上部後壁に隆起性病変を認め,生検の組織学的検査では切除した膵癌と類似した管状腺癌を認めた.PET検査で胃後壁に異常集積を認めたが,他に再発の所見なく胃部分切除を施行した.病理組織学的検査では胃壁全層にわたる管状腺癌の増生を認めた.膵癌術前に胃病変は指摘されておらず,臨床経過と併せて膵癌のneedle tract seedingによる胃壁転移と診断した.膵体尾部病変におけるEUS-FNAは,穿刺部位が切除範囲に含まれないため,術後の胃壁転移に対しても十分な注意が必要である.